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「モンスター」なんかじゃない!

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 「モンスターペアレント」という言葉が広まるようになって久しい。
 この言葉の広まりに対して、『親はモンスターじゃない!』の本を世に送ったのが、小野田正利先生(大阪大学大学院教授)でした。小野田先生は、保護者を「モンスター」と呼ぶことの間違いや危うさ、保護者に対して「モンスター」とレッテルを貼ることで学校や教師が自らを省みないようになることに警鐘を鳴らしました。

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 おぼろげな記憶をたどってみると、この本を購入したのは、確か2008(平成20)年の秋のことだったと思う。とある研究会に参加するために出向いた旭川の書店の「教育書コーナー」で、この本に出会った。本のタイトルに惹かれて書棚から手に取り、内容を読んでみると、非常に共感するところがあり、購入を決めました。
 この本―このタイトルを見た時に、無理難題、あらぬ非難を教師に浴びせる保護者に実際遭遇した過去がよぎりました。
 それは、生徒指導部長であった自分が担任をサポート当時のことです。ここで内容の詳細は紹介することはできませんが、担任はものすごいストレスに襲われました。深く落ち込んだり、投げやりになったり、激しく怒ってそのお母さんや原因をつくっているお子さんを非難することもありました。
その時に、周囲にいた私達のスタンスが、「きっと理由(わけ)がある」でした。校長先生・教頭先生・教務部長の先生・研修部長の先生、そして指導部長の私。学校のリーダー集団の全員がそういうスタンスでした。
 結局、このケースは、臨床心理士の先生へお母さんの同意を得てカウンセリングしてもらい、お母さん自身の「不安感」に寄り添う人を見つけること、そういうお母さんの心に不安を与えたくないという思いがわが子の「嘘」につながったことが見えてきて、時間はかかりましたが、沈静化しました。

 何か問題が起きると、その背景を探り、どうしてだろう、何がそうさせるのだろうと分析し、わかりあうことや手を取り合うことを求めあう。いくら苦しくても学校が寄って立つスタンスは、それだと思ってきました。そう取り組む努力をしてきました。決して相手を決めつけない。切って捨てない。
 小野田先生の本は、そうした学校と教師の姿勢をとてもとても激励してくれる内容でした。

 その小野田先生が、稚内で行われるPTA北海道研究大会の講師で来てくれることになり、生でお話を聴けるのを、とても楽しみにしていました。

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 いきなり度肝を抜かれました。
 だって、唐草模様のジャケットを着て、登場したのですから。「カンニング武山似」「綾小路きみまろ風」…キャッチコピーはいくつか聞いていましたが、想定外でした。一瞬、大丈夫かな…と不安がよぎりました。
 が、講演は期待した通りの素晴らしく合点がいく内容でした。唐草模様のジャケットも、その下に背中にフレーズ入りのオレンジのTシャツを着ていて、途中ジャケットを脱いでTシャツ姿になったのも、すべて最後まで話を聴いてもらうための演出でした。

 小野田先生が伝えたかった一番のことは、学校・教師と保護者は、子どもを成長させるためのパートナーなのだということです。決して、学校・教師はサービスを提供するのみの存在ではないし、保護者はサービスを直接的に受ける当事者ではない。「成長できる」というサービスの享受者は子どもであり、学校・教師と保護者は、それを実現するために力を合わせあう存在だ、という意見です。「教育の主人公は、子どもたちです」。まったくもって、同感です。
 そして、小野田先生は、子どもがサービスを享受し、実際に得られるものを次のような言葉で表現しています。

 教育の目的は何か?
 こう問われたら、みなさんはどう答えますか? …
 私はこう思います。
 自信と自立。…
 子どもの自信と自立のために、いま何が必要か。
 親も、そして学校も、同じ方向を見ながらそれを考えてほしいのです。

 小野田先生が、パートナーとしての学校・教師と保護者に求めているものは、これでした。振り返って、宗谷中ではどうであったか? 水産教育・修学旅行・職場体験・文化祭、そして日々の授業と学校生活…子ども達に少しでも自信をつけ、自立心を形成できたでしょうか? そのためのパートナーシップはどうだったでしょうか?
 少しはできたような気もするし、まだまだでもあります。何せ、子どもの可能性は無限大ですから…。

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 昔は、「子どもが人質にとられているから。」と要望や願いや不満を伝えてくれなかったこともあります。私もかつて言われたことがあります。小野田先生は、保護者が学校へ要望や不満を伝えることができるようになった現在の状況を肯定的にとらえ、次のように言います。

 かつて、学校には権威主義がありました。
 親や生徒は学校の論理に合わせるのが当然だ、という思い上がりです。
 でも、今は違います。
 親はへりくだることなく、教師と対等に話せます。
 言いたくて言い出せなかったことも、 ちゃんと口にできる。
 ホンネで語れる。
 これは親にとっても、教師にとっても、
 そして何より教育の主役である子どもにとって好ましい状況なのです。

 ところが、「モンスターペアレント」という言葉が広く知られるようになると、真っ当な要望や意見を伝えることをためらう傾向ができています。
 「こんなことを言うと、『モンスターペアレント』と言われるかもしれないけれど…」
 「私は『モンスター』じゃないけれど…」
 こんな枕詞を、身近でも耳にしてきました。

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 親は決して「モンスター」なんかじゃない。学校はそうとらえています。
 保護者の皆さんには、「自子中心主義」に陥ることなく、わが子と学級・学校のすべての子ども達に「自信と自立の力」をつけさせていくための意見・要望を大いに出してもらいたいと願っています。もちろん、それ以前に、納得できないこと、不安に思っていること、そんなことを伝えることも子どもを守る保護者の責任の発露であり、大いに相談してください。その際でも、「自子中心主義」に留意し、学校・教師の話にも必ず耳を傾けてください。
 学校も、皆さんの意見・要望、不満や不安等を受けとめる度量をいっそう大きくしていくように努めます。そして、教職員一人ひとりがそう高まっていくように、先生のがんばりも見つけて、ぜひ励ましてくれたりほめてあげたりしてほしいと願っています。
 
 まず自分から相手を信頼し、そのボールを投げたら、きっと信頼返しのボールが投げ返されると思います。そんなキャッチボールができるのが、「パートナー」なのかなと思っています。
 学校・教師と保護者が、子ども達に「自信と自立の力」をつけあうパートナーとして、本音で語り合える宗谷中学校を、引き続きめざし、その実現を図っていきたいものだなと思っています。
 と言うことで、これからもお手柔らかに…。

 最後まで駄文に付き合って下さったあなたの、ねばり強さに感謝して終わりにします。