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チェロ・ソロパフォーマンス―地域からのプレゼント

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 ソロチェロ奏者の吉川(きっかわ)よしひろさんのミニコンサートが宗谷中で行われました。
 宗谷岬在住の宗谷中PTA OBの徳田さんの橋渡しで実現した、ボランティアコンサートです。7月4日の放課後のことです。

 会場からの拍手の中、全身黒の衣装で登場した吉川さん。
 CDデッキ(?)から流れる波の音をバックに、チェロを弾き始めました。
 何という曲かはわかりませんが、「ああ、これが本物のチェロの音色なんだな…」と、全員が聴き入ります。
 そのうちに、どこかで聞いたことのあるようなメロディが耳に。
 「♪海は広いな 大きいな…」・・・『海』です。
 今度は、「♪われは海の子 白波の…」・・・『われは海の子』です。
 オープニングの曲は、宗谷に合わせて(?)、海にゆかりの曲のメドレーでした。

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 続いて、『ジュピター』・『アメイジンググレイス』・『カノン』。
 どこか聞き覚えのあるメロディと、目を閉じ体全体で奏でる吉川さんの姿に、子ども達は瞬きもせず、引き込まれるように見つめています。
 流れるような演奏の後は、トークです。
「チェロは、クラシックではありません。チェロはフリーです。」
「演奏の中に、“音魂”があり、その中に愛が込められているのです…。」

 トークは、吉川さんのライフワークのことに移っていきます。
「私は、障がい者施設などに行って、演奏をしています・・・
 熊本に行った時でした。そこには、目も耳も不自由な方がおりました。
 生まれつき、目も見えない、耳も聞こえない人です。
 想像してご覧…。目も耳も聞こえない…。」
「私は困りました。
 いったい、どうやって演奏を聴いてもらうことができるのか…。」
「そして、考えました。どうしたと思う?」
「僕は、こうやって、その、目も耳も不自由な方にチェロの音を聴かせました…。」
 吉川さんは、子ども達のうち一人を指名し、自分の傍らに立たせました。
「とって食べたりしないから、大丈夫だよ。(笑)」
「僕は、こうしたんです。ここに掌を置いて…。目をつぶって、耳も聞こえない。」
 指名された女子は、チェロの胴体の表板、弦の下あたりに掌を置き、目をつぶりました。そして、アシスタントを務めている奥様が、女子の耳をやさしく両手でふさぎました。
 ズー、ズー、ズー。吉川さんが弓で弦を奏でます。
「どうですか?」
「掌に響きが伝わってきました。」

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 続いて、チェロで奏でる、『ソーラン節』。
 聴き慣れたメロディの合間に、
「ハイ~、ハイ!」
 吉川さんの気合のこもったかけ声がホールいっぱいに響きます。

「楽しい時は、あっという間に過ぎてしまいます。最後の曲は・・・」
 コンサートのラストは、宮沢賢司作曲の『星めぐりの歌』でした。

「雨にも負けず 風にも負けず
 雪にも 夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだをもち
 慾はなく 決して怒らず いつも静かに笑っている
 ・・・
 褒められもせず 苦にもされず
 そういうものに わたしはなりたい」

『雨にも負けず』の詩の朗読に続いて、チェロによるの『星めぐりの歌』演奏。朗々とそらんじる吉川さんの張りある声と深いチェロの音色に、みんなすっかり圧倒されています。

 ボランティアコンサートのお礼に、二人の生徒代表から、花束と感謝の言葉を贈りました。
「チェロのとってもきれいな音にびっくりしました。
 見る・聴くだけでなく、手でも感じることができることを知りました。
 今日は、ありがとうございました。」
 吉川さんに、会場から心のこもった拍手が送られました。

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「花束をもらっては、そのまま終われませんね。」
 アンコール演奏のおまけです。
 1曲目は、吉川さんのオリジナル曲『タイムズスクエア』。
 時には弦を指で弾き、時は胴体を叩いてアクセントをつけながらの演奏です。
 そして、本当のラストは、『宗谷中校歌』の演奏のプレゼントでした。
 日頃歌っているわが校歌。チェロの音色で初めて聞く校歌。ゆったりと、奥深く、じわじわと広がるように響く校歌のメロディに、みなしんと聴き入っています。
 みんなが感謝の気持ちを込めた大きな拍手で、吉川さんをステージから送りました。

「いやあ、子ども達、真剣に聴いてくれましたね。びっくりしました。」
 いえいえ、吉川さんの演奏とトークの素晴らしさの賜物です。

 突然持ち込まれたお話で、特段こちらで何も準備もせずに、お任せで行っていただいた、今回のボランティアコンサート。
 初めて聴くチェロの音色と吉川さんの演奏の深い芸術性、そして自分達が体験したことのない経験談も聞くことができ、子ども達には本当によい機会になりました。
 これは、宗谷中に思いを寄せてくれる地域の人たち、OBの皆さんの愛が実現させてくれたひと時の夢物語でした。
 学校は、地域の皆さんの支えで成り立っていること、そしてそのことへの感謝を心から感じながら、地域に期待され信頼される学校づくりにいっそうがんばらねば、と思わされた日でした。

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