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7年ぶり公式戦勝利―中体連新人戦野球部

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「がんばれ~!」「あと1つ~!」
 内野スタンドからのお母さん方の熱い声援。その声はもう、枯れています。
 中体連新人戦野球会場=若葉台球場の1塁側スタンド、赤い夕日が背後から差し込み、宗谷中応援席は燃えるように盛り上がっています。

 1回戦第2試合、宗谷中学校対稚内東中学校。最終回7回の裏、宗谷中学校の守備。
 得点は9対6、宗谷中の3点のリード。2死ランナーなし。
「最後までわからないぞ。」
 内野スタンドとグランドを隔てるフェンスの際には、お父さん方が拳を握りしめて、戦況を見守っています。

 セットポジションから足を上げたピッチャーの手から、球が放たれます。
「カーン!」 息をのんで打球を追う、応援席。
 打球は内野に高く舞い上がり、ショートが大きく1回2回と両腕を回しています。
「こうき~!」「とってえ~!」「キャア!」
 応援席は、絶叫の渦です。
「パシッ」ボールは、ショートのグラブにすっぽりと収まりました。
「キャ~!」「やった~!」「ウォ~!」「よ~し!」 応援席は総立ちです。
 宗谷中野球部が、見事に7年ぶりに公式戦勝利を飾った瞬間です。

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 ホームプレートめがけて、選手達が一目散に駆けてきます。
 みんな、笑顔です。
 応援席では、お母さん方、応援の子ども達が喜びを分かち合い、お父さん方はがっちりと握手を交わし合っています。
 整列し、相手チームと審判への挨拶を終え、応援席に向かって走ってくる選手達。
「気をつけ! ありがとうございました!」「ありがとうございました!」
 深々と礼をする子ども達。
「おめでとう!」「よくやったあ!」
 応援席から、いつも以上に大きな拍手が巻き起こりました。
 顔を上げた子ども達の表情は、にこにこ顔です。実に子どもらしい、いい笑顔です。
 応援席もまた笑顔でいっぱいです。子ども達から大きな喜びと感動をもらい、父さんも母さんも、老いも若きもみんな、満足げな様子です。

 応援席には、選手のおじいちゃん・おばあちゃん、地域の皆さん、陰ながら宗谷中を応援してくれている同窓生の皆さん、様々な方がいらしてくれていました。
 皆、勝利の余韻に浸り、応援席から立ち去ろうとはしません。

 初回に先制するもすぐに逆転され、追いすがるも突き放され、4回終了時に2対6。一度は「だめか」と、スタンドはあきらめかけた試合展開でした。
 しかし、選手達はあきらめようとはしませんでした。
 5回に2点を追加して追いあげ、6回には満塁から走者一掃の3塁打などで4点を上げて逆転し、最終回にはスクイズを見事に決めてダメ押し点を上げ、5回以降相手の得点を許さず堂々と勝ちきったのでした。
 予想をはるかに超える劇的な試合展開、大人が思っている以上の子ども達の粘り強さに、皆心から感動し、その余韻に浸っているのです。
 大人達に夢を見させてくれた宗谷中野球部の選手のみんなに、心からありがとうです。

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 翌日は、決勝戦でした。対戦相手は潮見中です。
 1回戦・2回戦、相手チームをコールドで破ってきた強敵です。
 結果は、0対10のコールド負け。実力差がそのまま結果となってしまいました。
 しかし、堂々たる試合でした。
 現在持っている力を存分に発揮して、子ども達は精一杯闘ってくれました。
 ピッチャーは外連味なく全力投球。いつも以上に球が走り三振も奪いました。
 内・外野も懸命に球を追い、平凡なフライは当然のように捕り、捕球してからすぐに中継に送球する、ランナーを牽制して進塁を許さないなど、次を考えたプレーで引き締まった試合を展開することができていました。
 練習してきたことをその通り出せた試合だったのでは?と、思います。
 
 閉会式で、準優勝チームとして整列した宗谷中野球部員。全然見劣りしていなかったです。
 準優勝旗を手にし、笑顔で記念写真に収まった選手達の晴れやかな顔は、何とも清々しかったです。

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 2試合通じて、宗谷中野球部が何より素晴らしかったのは、声です。
「こ~い!」「バッチこ~い!」
「1アウト~!」「1アウト~!」
「ナイスボール!」「ピッチャー勝ってる!」
「絶対勝つぞ! 宗谷中ファイ!」「オーッ!」・・・
 気合を入れる声、確認し合う声、仲間を激励する声、仲間の激励に応える声…、広いグランドに彼らの声は響き渡り、途切れることはありませんでした。

「『勝ちたい』という気持ちだけでは、勝利は難しいかもしれません。
 『必ず勝つ』という気持ちにチーム全員がなることが、勝利への第一歩です。」
 壮行会でそんな激励を子ども達に行いました。
 野球部はきっと、部員一丸となって、「絶対勝つ」という気持ちで臨んでくれたに違いありません。それが勝利に結実しました。

 では、野球部では、なぜ「絶対勝つ」という気持ちになれたのでしょう?
 それは、大きな声を出し、声を出し続けることができたからではないでしょうか。
 グランドに響き渡った彼らの声は、自分自身を奮い立たせ、仲間の頼もしさを感じ、相互に勇気づけ合う力となりました。声を出し、その声を互いに聞いた選手達は、お互いが勝利への気概を共通もっていることを確認し、それを勇気と粘り強さ、立ち向かうこと・つなぐことにつなげ、勝利を引き寄せたのです。

 気持ちを表に出す、「声を出す」という行為。これは、簡単ではありません。
 しかし、宗谷中グランドでは、毎日、野球部員の声が響き渡っています。
 「次は勝つ」という勝利者のメンタルは、実は日常の練習の積み重ねを通じて形成されてきたのです。練習中から声を出すこと、その意義をとらえて自ら声を出すこと、声を互いに出すことが気風として野球部の中に形成されてきたことが、「勝利」へとつながってきたのです。

 野球部の勝利は、野球部員に自信をもたらしたに違いありません。
 また、宗谷中全体には勇気をもたらし、そして、野球部の勝利から学ぶことの必要性を考えさせたに違いありません。
 野球部はまだまだ強くなる。卓球部・羽球部もそうなると思います。
 なぜなら、子ども達には伸びしろがまだたっぷり残されているのだから…。
 野球部の勝利は、宗谷中の中で、新たな「化学変化」をきっともたらすことでしょう。
 
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